フォーメックスはブランド創業25周年を記念してエッセンス セラミカ スケルトン COSCを発表した。

フォーメックスは長らく“マイクロブランド”という括りで語られてきたが、同社がスイスの高級時計業界の多くに部品を供給する姉妹会社デクセル(Dexel)と関係していることから、私としてはその呼び方に少々違和感を覚える。デクセルの強みのひとつがセラミック製造であり、実際に多くの高級ブランドのセラミック製ケースやブレスレットを手がけている(公表されているものもあれば、されていないものもあるが)。このノウハウを活かし、フォーメックスはオールブラックのセラミックウォッチとなるエッセンス セラミカを送り出した。

 フォーメックスのCEOであるラファエル・グラニート(Raphael Granito)氏が先週HODINKEE編集部を訪れた際に語ってくれたところによると、この価格帯の多くのセラミック製ウォッチは全面ポリッシュまたは全面サンドブラスト仕上げのいずれかに分類されるという。ポリッシュとブラッシュド仕上げでコントラストを出すといった、複数の仕上げを施すのは価格的に不可能に近いというのが通説だ。これが、1万ドル以下のセラミックウォッチで複雑な仕上げがほとんど見られない理由だろう。そこで今年フォーメックスはその常識に挑戦し、エッセンス セラミック スケルトン COSCを税抜4400ドル(日本円で約66万円)以下でリリースした。

 エッセンス セラミカの構造は基本的にスティールバージョンと変わらず、素材だけが新しくなっている。ケース径は41mm、厚さは11.2mmで、ケースの重心は低く手首に沿うように収まる。また、ケース径に対してラグ・トゥ・ラグが46.2mmと短いため、数値以上にコンパクトに感じられる。ケースには特許取得済みでブランド独自のサスペンションシステムが採用されている。これは外装ケースが中央のダイヤルとムーブメント(チタン製コンテナに収められている)を4本の六角ビスで連結し、サスペンション構造で中身を保持するというものだ。この機構は衝撃を和らげる目的で設計されているが、装着時にしなやかに動き、独特で時にクセになる装着感をもたらす。ラファエル氏によれば、このシステムをセラミック特有の構造的性質に対応させるために再設計が必要だったという。

 フルセラミック製のブレスレットには、ケースと同様のブラッシュド仕上げとダイヤモンドポリッシュの面取りが施されている。そして注目すべきはクラスプだ。金属パーツを一切使用せず、世界初となるセラミック製マイクロアジャスト機構を搭載している。クラスプは約1.5mm単位で最大5mmの調整が可能。ブレスレットを内側に押し込むことでラチェットが締まり、外側または内側のボタンを押すと緩めることができる。さらに、エンドリンクの裏側にはセラミック製のクイックチェンジトリガーも備わっている。

 エッセンス セラミカは全4色展開、各88本限定でリリースされる。少しだけ高いGT セラミカ(税込70万5500円)は、ローズゴールドカラーのインデックスを配した2層構造の複雑な外周ダイヤルを備える。一方、よりシンプルなデザインの3モデルがストラダーレバージョン(税込68万5000円)として展開され、ホワイト、バイオレット、ブルーのスーパールミノバ製インデックスを採用。外周のインデックス部はブラッシュド仕上げの円形リングで構成され、洗練された印象を与える。ダイヤル中央に大きく開いた開口部からは、COSC認定を受けたスケルトン仕様のセリタ SW200-1ムーブメントが覗く。


我々の考え

これは非常に意欲的な試みだ。たとえそれが、「この価格帯でこうした時計が実現可能である」ことを示す証明にすぎないとしても。最初にフォーメックスが約4000ドルのフルセラミック製ウォッチを出すと聞いたとき、正直それほど驚かなかった。というのも、すでにそれ以下の価格帯でもセラミックウォッチは存在していたからだ。いったい何が違うのだろうと。しかし実物のエッセンス セラミカを見て、その仕上げと質感の違いには素直に驚かされた。価格帯の近いほかのセラミックウォッチとは一線を画していた。そして何より、これと同等のフルセラミック製ブレスレット(クラスプまで含めて)を備えた時計は、ほとんど存在しない。ましてや、ここまでのマイクロアジャスト機構を持つモデルとなれば皆無に近い。スケルトンダイヤルは好みが分かれるだろうが、私としてはうまくまとまっていると感じた。今後、ソリッドダイヤルのバリエーションが登場することはまず間違いないだろ

 とはいえ、エッセンス セラミカがどの層をターゲットにしているのかという問いは残る。仕上げの優れたセラミックウォッチがこの価格で手に入るというのは非常に意義深いが、同時にこの価格帯は他ブランドへの選択肢が大きく広がるレンジでもある。つまりこの価格帯で時計を検討する人の多くは、より知名度の高いブランドのモデルとも比較検討することになるはずだ。そう考えるとこのエッセンス セラミカは、上位モデルに対しての“お得な代替案”としての位置づけがしっくりくる。たとえば、ゼニスのデファイ スカイライン スケルトンのセラミックモデルと比べれば、価格は4分の1以下で“オールブラック欲”を満たしてくれる存在とも言えるだろう。一方で既存のフォーメックスコレクターにとっては、これまでとは異なる、よりプレミアムな1本としての魅力を放つはずだ。

フォーメックス自身、このモデルが非常に競争力のある価格設定のスティール製モデルほどの大衆的な訴求力を持たないことは理解している。だからこそ、各バージョン88本の限定生産という形を取っているのだろう。しかし同時に、自社の製造力を誇示するフラッグシップモデルを出すにはこれ以上ふさわしいタイミングはない。

ショパール 41 XP CS アルパイン イーグルコレクション初となるプラチナモデルが登場した。

アルパイン イーグルコレクションでは初となる、プラチナ素材が導入された。2023年に登場したサーモンダイヤルのエクストラスリムモデル、アルパイン イーグル XPSがL.U.Cムーブメント搭載で好評を博したことに影響を受けたのは間違いないだろう。そして今回の新作にも、L.U.Cムーブメントが搭載された。本作では非常に明るいプラチナ950製ケースに、“シェード・オブ・アイス”と名付けられたクールな色調のフュメブルーダイヤルが組み合わされている。

Alpine Eagle 41 in Platinum

 真鍮にプレス加工を施したダイヤルには、アルパイン イーグルのシグネチャーである“鷲の虹彩”パターンが中央から放射状に広がる。アプライドの真鍮製インデックスにはX1グレードのスーパールミノバが塗布され、バトン型の針はブランドが掲げるエシカルなホワイトゴールド製だ。

 インデックスはかつてチタン製の8HFでみられたのと同じく、12時位置のみローマ数字、そのほかはシンプルなバトン型で構成されている。また本作ではXPSと同様に日付表示を排除しているが、サーモンダイヤルの兄弟モデルがスモールセコンドだったのに対し、こちらはセンターセコンドを採用している点で異なる。

 ケース径は41mmで厚さは8mm。シースルーバックからはCal.L.U.C 96.42-Lが鑑賞できる仕様でありながら、スポーツウォッチとして十分な100mの防水性能を確保している。マイクロローターにはプラチナ950が用いられており、その存在感は圧倒的だ。ふたつの香箱を積み重ねた構造によって、最大65時間のパワーリザーブを実現している。このムーブメントはほかのアルパイン イーグルに搭載されている標準的なショパール製キャリバーと比べて大幅にクラスが上で、仕上げも格段に手が込んでいる。ブリッジにはコート・ド・ジュネーブ装飾が施され、アングラージュもそこかしこに見られる。テンワの上にはスワンネック緩急調整装置も備わっており、その美しさは目を見張るものがある。キャリバーはCOSC認定を得ており、本モデルはアルパイン イーグルとして3作目のジュネーブ・シール取得モデルとなる。

 ケース同様、ケース一体型のブレスレットもプラチナ製だ。ブランドによれば、本作ではテーパーを強調した新デザインのブレスレットを初めて採用したのだという。プラチナ使用量削減のためではないかと勘ぐる向きもあるかもしれないが、過去モデルよりも優雅な装着感を目指したものとも考えられる。興味深いのは、バックルのプッシュボタンはプラチナ製である一方、ブレード部にはホワイトゴールドが用いられている点だ。

 このプラチナ製のショパール アルパイン イーグル 41 XP CS プラチナは発売時期未定で、価格は11万500ドル(日本では予価1665万4000円)となる。


我々の考え

私はアルパイン イーグルの大ファンだ。2年前にはチタン製の8HFをコレクションに加えたのだが、これが私のコレクションのなでも最高の1本であるという点については、ジェームズ・ステイシーも同意してくれるところだろう。しかし今回発表されたプラチナ製の新作アルパイン イーグル XP CSは、まったく異なる方向性を持ったモデルであり、アルパイン イーグルとしてこれまでとは異なる市場に向けた提案であるように感じる。

Alpine Eagle Platinum LUC Caseback

 2019年のコレクション立ち上げ以来、これまでプラチナ製のアルパイン イーグルが存在していなかったという事実には正直驚いた。ブランドとしては自然な展開のように思えるが、やはりこれまではルーセント スティール™やエシカルゴールドといった物語性を重視した素材に注力してきた背景がある。しかしジュエリー分野からやって来た顧客が多いというブランドの特性を踏まえれば、プラチナの眩い輝きが魅力となることは間違いない。価格は11万ドル超と、時・分・秒表示のみのスポーツウォッチとしては非常に高額だ。この価格帯になれば、他ブランドの複雑機構搭載モデルとも競合することになる。ただし同様のプラチナ製モデルでもこれくらいの価格は珍しくはなく、さらにこのモデルが大量生産されることはまずないだろう。

 個人的には、ぜひ実物を見てみたい。単純にその“重厚感”を体感してみたいというのもあるし、リデザインされたブレスレットの仕上がりも気になる。テーパードが増したことでよりエレガントな印象になるのであれば、今後はアルパイン イーグル全体のラインナップにこの新しいブレスレットが採用されていくことを期待したい。

 今後数日にわたってWatches & Wondersの最新情報を引き続きお届けする。新作のすべては、こちらのページで確認できる。


基本情報

ブランド: ショパール(Chopard)
モデル名: アルパイン イーグル 41 XP CS プラチナ
型番: 295396-9001

直径: 41mm
厚さ: 8mm
ケース素材: プラチナ950
文字盤色: シェード・オブ・アイスのフュメダイヤル
インデックス: アプライド
夜光: あり
防水性能: 100m
ストラップ/ブレスレット: 再設計されたプラチナ製ブレスレット


ムーブメント情報

キャリバー: LUC 96.42-L
機能: 時・分表示、センターセコンド
直径: 27.4mm
厚さ: 3.3mm
パワーリザーブ: 65時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 29
クロノメーター認定: COSC認定


価格 & 発売時期

価格: 1665万4000円 (予価)
発売時期: 発売時期未定
限定: なし

インディペンデントシーンの新顔たちを追いかけ続けるだけで、

何が起きているのかをどうすればキャッチアップできるのか、そして有望な若手ブランドを見逃さずに“先取り”できるのか。そんな質問を受けることがある。そのとき私が伝えるのは、コレクターとのネットワークを大切にすること、そして注目すべきウォッチメイキングスクールの卒業生や受賞歴のある新進ブランドをチェックし続けることだ。もちろん、なかには立ち上げ当初から応援しているブランドが成功することに、個人的な思い入れや利益を持っている人たちもいる。

オーデマピゲスーパーコピー時計 激安とはいえ、雑多な情報のなかから本当に価値のある存在を見つけ出せるようになると、アレクサンドル・ハゼマン(Alexandre Hazemann)氏とヴィクトル・モナン(Victor Monnin)氏による“スクールウォッチ”のような逸品に巡り合えることがある。これは、ソヌリ・オ・パッサージュ・アヴェック・ジャンピングアワー・インスタント(パッシングチャイム付き瞬時切替式ジャンピングアワー)を搭載した限定20本の時計で、2種類のバリエーションで展開されている。

もしふたりの名前にピンと来たなら(ソヌリにかけたジョークじゃない)、それは彼らがF.P.ジュルヌ ヤング・タレント・コンペティションの受賞者だったからだ。正確にはアレクサンドル・ハゼマン氏が受賞したのだが、本人たちにとってはそんな区別に意味はない。というのもハゼマン氏とモナン氏はフランス・モルトーにある時計学校の1年目で出会い、すぐに意気投合した。この学校はシルヴァン・ピノー(Sylvain Pinaud)氏、テオ・オフレ(Theo Auffret)氏、ジュリアン・ティシエ(Julien Tixier)氏、レミー・クールズ(Rémy Cools)氏といった、そうそうたる時計師たちを輩出してきた名門である。ふたりは互いに、同じように努力を惜しまず細部まで手を抜かない姿勢と情熱を見いだした。それ以来、どちらかの成功はふたりのものとして分かち合われてきたのである。

 「彼と出会ったとき、物事を100%の完成度に仕上げるまで手を抜かないタイプだとすぐにわかりました」と、ヴィクトル・モナン氏はアレクサンドル・ハゼマン氏について語った。「なかには時間が来たらとりあえず手を止めるという人もいます。でも僕たちは、たとえ学校であっても仕事が終わらないなら、授業後に1時間でも残って仕上げるという考え方でした。だからほかの学生たちが教室を出ていくとき、アレックスがひとり作業台に残っているのを見て、“彼も自分と同じ価値観を持っている”と確信したのです」

ふたりが通っていた学校では、卒業時にジャンピングアワー付きのチャイム機構を製作するという課題が課されており、それを9ヵ月かけて完成させることでディプロマ(修了証)が授与される仕組みだった。すでに同居していたふたりは、チームを組んでより高い完成度を目指すことを決意する。課題の要件を満たすだけでなく、実用的で就職活動のアピールにも使え、場合によっては販売して次のステップに進むための足がかりにもなるような時計をつくろうと考えたのだ。そうして完成したのが、のちに“スクールウォッチ”のプロトタイプとなる時計である。だが、ふたりはさらにその先を目指し、F.P.ジュルヌのコンペティションに応募することにしたのだ。これは以前から、上級生たちが挑戦していたのを見て憧れていた舞台だった。ここから、ふたりが語るその後の物語が始まる。

「F.P.ジュルヌのコンテストが始まったとき、審査員から最初にこう言われました。“ブルーとグリーン、どちらかを選ぶなんてできない”と」と、ハゼマン氏は振り返る。モナン氏も続けてこう語る。「“どちらにも1位をあげたいけれど、ルール上それはできない”とも言われました。彼らはブルーモデルの技術的な設計を高く評価して、最終的にその時計に賞を与えることにしたんです。でも僕たちのあいだでは最初から決めていたんです。誰が受賞するかなんて気にしない。僕たちは常に“ふたりでひとつ”だって」

もちろん、受賞とともにその時計には多くの問い合わせが寄せられるようになった。当初、ふたりはブランドを立ち上げるかどうか迷っていたが、最終的にはスイスで理想的な工房を見つけてスペースを改装しながら少しずつ体制を整えていった。現在では外部からの資金援助を受けることなく、スタッフ9人のチームへと成長している。それはつまり、無駄な出費をできるだけ抑える努力が必要だったということでもある。ふたりは今も、学生時代に学校から購入した作業台や工具をそのまま使い続けている。だが時計づくりそのものでは、一切の妥協をしていない。


我々が彼らを好きな理由

この記事に掲載している写真の多くは、アレクサンドル・ハゼマン氏のプロトタイプを写したものだ。撮影はWatches & Wondersの初日、ホテルのバーで行った。ここでハゼマン氏の名をあえて強調しているのには理由がある。というのも、ふたりはこの最初のリリースにおいて非常にユニークなアプローチを取っているのだ。ハゼマン氏には彼自身のバージョンがあり、モナン氏にもまた異なるバージョンがある。それぞれ10本限定で、ケースサイズは共通して直径39.5mm、厚さ10.9mmのスティール製。だが、それぞれの時計師の美意識と得意とする技術に基づいた個性が随所に反映されており、仕上がりはまったく異なるものになっている。

アレクサンドル・ハゼマン氏のデザインは、よりテクニカルなアプローチを取っている。オープンワーク仕様のインダイヤルやアクセントにブルーを採用し、さらにダイヤル側にはセリフ体フォントを現代的かつ商業的な感覚で取り入れている点が特徴だ。

 「アレックスは開発や構造設計の才能に長けていて、3Dモデリングもコンピューター上で彼が担当しています」とモナン氏は話す。「僕はどちらかといえば、プロジェクト全体の管理や装飾職人やケースメーカー、業界の人たちとのやりとりを通じて、目標やスケジュールを明文化し、数値化していく役割が得意でした。そうした準備がすべて整ったあとで作業台の前に並べば、プロトタイプの製作や組み立てにおいてはふたりの腕前に差はありません」さらに言えば、モナン氏のほうがややアーティスティックな感性を持っていて、それが彼の“スクールウォッチ”にもしっかりと反映されているようだった。

いまの独立時計師にとって、仕上げの美しさは創造性やビジョンに次いで重視される要素だ。そしてそれは、ふたりの異なるビジョンが複雑に交差しながらも成立しているこのブランドにとって、どこか矛盾した話のようでいて実にうまく機能している。ベースとなるデザインも仕上げの完成度も申し分ない。ダイヤル側には3つのインダイヤルが配置され、12時位置に瞬転ジャンピングアワー、3時位置に分表示、9時位置に秒表示が並ぶ。そのインダイヤルを縁取るように1本の長いゴングがダイヤルの縁を走っており、正時になると7時と8時のあいだに配されたブラックポリッシュ仕上げの大型ハンマーがこれを1回叩いて音を響かせる。

言及せずにはいられない点として、これはクリストファー・ウォードのC1 ベル カントとどこか似た雰囲気がある、と感じる人もいるだろう。両者ともにソヌリ・オ・パッサージュを備えているからだ。ただし、クオリティ、デザイン、アプローチのいずれにおいても違いがわからないとしたら、もうこちらから言えることは多くない。この時計の開発は、クリストファー・ウォードのモデルが発表される前からすでに始まっていた。加えてこちらは瞬転ジャンピングアワーを搭載し、チャイムの音もはるかに力強く、明瞭で、耳に心地よい響きを持つ。ハイエンドな独立系ブランドによる本格的なチャイムウォッチであり、もちろんクリストファー・ウォードの革新性には敬意を表すべきだが、“複雑機構の入門機”として手ごろに楽しむための時計とは一線を画している。実物を手に取り、目を閉じて音を聞けば…その違いは確かに感じ取れるものだ。ヴィクトル・モナン氏のデザインにはマラカイトとオパールのインダイヤルを採用し、ムーブメントプレートには自身の姓であるMonninを刻んでいる。

 「スクールウォッチからスースクリプションモデルまで、まるで何千マイルも離れているように感じました」とモナン氏。「単にケースやムーブメントが小さくなったという話ではなく、すべてが新たなプロジェクトなのです。工房のこと、チームのこと、そしてもちろん時計そのものについてもそうです。僕たちは自分たちの工房でムーブメントをつくりたいと思っていました。これはとてもシンプルなことで、“すべてを自分たちでやる”という方針です。最初の設計からずっとそうやってきました。アレックスと僕でデザインと構造を担当していて、アレックスは工房のエンジニアでもあります。残りの部品については専任の部門があって、プロトタイプの段階ではあらゆるパーツを自分たちで製作できます。ただし量産になると話は別で、さすがに数千本のネジまでは自分たちで作っていません。それでも可能な限り、自分たちの手で作るという姿勢は変わっていません」

全体の美意識をひと言で表すなら、非常に“フレンチスタイル”だと言えるだろう。広い面積のフロスト仕上げのプレートに、深くていねいなアングラージュ。私は常々、カウントするためだけに内角の角度を最大化するような考え方に馬鹿げていると感じているが、このムーブメントは見せるための装飾に走るのではなく時計としての目的を果たすために必要な構造と美しさを両立させている。そういった意味では余計なものは一切なく、不足もない。ムーブメントは完全な左右対称ではないが、12時から6時にかけてのセンターラインに整然と軸がとおっており、視覚的なバランスは非常に心地よい。下部には大振りなテンプが鎮座し、ケース厚10.9mmという数値からは想像できないほどの奥行き感を感じさせてくれる。もしあえて1点だけフィードバックを挙げるとすれば、ケースがやや汎用的な印象で、個性がもう少し欲しいということだろう。細部まで手を抜かないふたりであればこの最後のピースについても、今後さらに深く掘り下げていくことに期待したい。

CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ クロノグラフ 41mm スティールモデル

先日ご紹介したスティールモデルのCODE 11.59 バイ オーデマ ピゲは全部で6機種発表され、3針オートマチックが3機種で先にピックアップしました、そして本日ご紹介するクロノグラフも3機種と言うラインナップになっています。

カラーは同じグラデーションベージュとグリーンとブルー。

搭載ケースは41mm、厚さは12.6mm、ムーブメントは70時間パワーリザーブの自社製自動巻きクロノグラフキャリバー4401。

ミドルケースがセラミックの26393QT.OO.A064KB.01が4,620,000円、グリーンとブルーがスティールオンリーが4,345,000円の国内定価となっています。

かなりの値段ですよね・・・。複雑機構のフライバッククロノグラフだとは言え、SS×レザーストラップの時計が430万円から・・・って、かなり強気の価格設定に感じます。

が、

パテック・フィリップのフライバッククロノグラフ(ステンレススティール)を見てみると5905/1A-001なんて8,591,000円の定価ですので、CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲはストラップ仕様だとは言え半額ほど。

やはり雲上は違います。

独自のダイヤルデザイン
最新のスタンプ加工ダイヤルは同心円サークルのパターンにより、これまでにはなかったストラクチャーと質感をアピールしています。

新しい同心円模様
オーデマ ピゲがスイスのギヨシェ職人ヤン・フォン・ケーネルの協力のもとに開発したダイヤルは、PVD(蒸着)加工によるブルーとグリーンのカラー、ガルバニック加工によりベージュのカラーを展開しています。

ダイヤルの中央から放射状に波が広がる模様の中に数百の微小なホールがあり、光をとらえてきらめきます。

最新世代のキャリバー
時計づくりのテクノロジーと伝統のノウハウの融合から生まれたこの6モデルは、最新世代のキャリバー4302(秒とデイト表示)、または一体型自動巻きクロノグラフキャリバー4404(軸歯車とフライバック機能)を搭載しています。どちらのムーブメントも特許保持のメカニズムで、ウォッチの機能調整時の優れた安定性と精度を備えています。

特製のローター
サファイアケースバックからはどちらのキャリバーも多くの洗練された装飾と仕上げ、そしてコレクションのために独自に開発した最新の22Kピンクゴールドのオープンワークローターを見ることができます。

デザインは3針オートマチックモデルと同じく、同心円模様と長めのバーインデックス、シンプルで格好良いです。

ゴールドモデルのクロノグラフと比較すると、針とインデックスに夜光が追加されたこと、12のアラビア数字インデックスが無くなり、デイト表示も少し大きめになっているようです。インダイヤルの目盛も細かくなりスポーティさが格段にアップしています。

リューズの形状も3針オートマチックモデルと同じく変わっているようです。

26393QT.OO.A064KB.01

CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ クロノグラフ
Ref. 26393QT.OO.A064KB.01
¥4,620,000

ステンレススティールとブラックセラミックの組み合わせによるバイカラーデザインが目を惹きます。さらにベージュのダイヤルと合わせたレザー/ラバーストラップを組み合わせています。

ケース
素材 セラミック
防水 30 メートル
サイズ 41 ミリ
ガラス
オーデマ ピゲ マニュファクチュールは、ぴんと張ったアーチ型シルエットが奥行きや全体像、光と作用して独特の視覚を生み出す、二つの曲線を描く現代的なサファイアクリスタルを創り出しました。内側面はドーム形状で、12時位置から6時位置へ縦に曲線を描いています。スポンサーリンク

文字盤
スモークベージュダイヤル、ベージュカウンターとブラック外周リング、6時位置にブラックカウンター、蓄光処理を施したホワイトゴールドのアプライドアワーマーカーと針、ブラックインナーベゼル。

ブレスレット
ベージュラバー加工のストラップ、ステンレススティールのピンバックル。

キャリバー4401
機能 クロノグラフフライバック、時、分、スモールセコンド、デイト
石数 40
メカニズム 自動巻き
パワーリザーブ 70 h
外径 32 ミリ
部品数 381
周波数 4 Hz 28,800 振動/時
厚さ 6.9 mm

26393ST.OO.A348KB.01 ブルー

CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ クロノグラフ
Ref. 26393ST.OO.A348KB.01
¥4,345,000

グレーのカウンターを並べたこのステンレススティール クロノグラフでは、オーデマ ピゲのシグネチャーである「ナイトブルー、クラウド50」のダイヤルに新たなスタンピングモチーフが生き生きとした感性を与えます。

ケース
素材 スティール
防水 30 メートル
サイズ 41 ミリ
ガラス
オーデマ ピゲ マニュファクチュールは、ぴんと張ったアーチ型シルエットが奥行きや全体像、光と作用して独特の視覚を生み出す、二つの曲線を描く現代的なサファイアクリスタルを創り出しました。内側面はドーム形状で、12時位置から6時位置へ縦に曲線を描いています。

文字盤
「ナイトブルー、クラウド50」カラーのダイヤル、ブルーカウンターとグレー外周リング、6時位置にグレーカウンター、蓄光処理を施したホワイトゴールドのアプライドアワーマーカーと針、グレーのインナーベゼル。

ブレスレット
ブルーラバー加工のストラップ、ステンレススティールのピンバックル。

26393ST.OO.A056KB.01 グリーン

CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ クロノグラフ
Ref. 26393ST.OO.A056KB.01
¥4,345,000

クロノグラフのステンレススティール ケースにはダークグリーンのダイヤルとブレスレットを組み合わせ、エレガントなスタイルに仕上げています。

ケース
素材 スティール
防水 30 メートル
サイズ 41 ミリ
ガラス
オーデマ ピゲ マニュファクチュールは、ぴんと張ったアーチ型シルエットが奥行きや全体像、光と作用して独特の視覚を生み出す、二つの曲線を描く現代的なサファイアクリスタルを創り出しました。内側面はドーム形状で、12時位置から6時位置へ縦に曲線を描いています。

文字盤
グリーンダイヤル、グリーンカウンターとロジウムカラー外周リング、6時位置にグリーンカウンター、蓄光処理を施したホワイトゴールドのアプライドアワーマーカーと針、グリーンのインナーベゼル。

ブレスレット
グリーンラバー加工のストラップ、ステンレススティールのピンバックル。

タイメックス「アイアンマン 8ラップ メタル」を実機レビューする。

本作は、タイメックスを代表するデジタルスポーツウォッチコレクション、「アイアンマン」に属する2024年新作であり、ステンレススティール製の高級感あるケースをまとっている。

タイメックス「アイアンマン 8ラップ メタル」Ref.tx-tw5m66500
ステンレススティール製のケースを採用した2024年新作。オールブラックのカラーリングがクールな印象をもたらす。クォーツ。SSケース(直径39mm)。100m防水。5万8300円(税込み)。

今回レビューを行うのは、タイメックスの「アイアンマン 8ラップ メタル」だ。本作は、タイメックスを代表するデジタルウォッチのひとつ、「アイアンマン 8ラップ」のデザインを受け継いだ、2024年新作である。

オリジナルは1986年に誕生し、パネライ時計コピー 代引き発売初年度に40万本を売り上げ、スポーツウォッチの金字塔とまで呼ばれた存在だ。アメリカの第42代大統領を務めたビル・クリントンが愛用していたことや、同シリーズの時計をNASAの宇宙飛行士が宇宙へ携行したことなど、数多くの逸話を持つことでも知られている。

タイメックスは、そのルーツを1854年にさかのぼるアメリカの時計ブランド。長い歴史から、たった1ドルのポケットウォッチ「ヤンキー」や、1933年の「ミッキーマウス・ウォッチ」など、多くの名作を世に送り出してきたが、タイメックスと言えばアイアンマンを思い浮かべる方も少なくないのではないだろうか。

オリジナルを知る人にとっては懐かしく、また知らない人にとっては新鮮味すら感じるアイアンマン。現代の新作として登場したアイアンマン 8ラップ メタルは、どのような時計なのだろうか。本作にはゴールド、シルバー、ブラックの3種類のカラーバリエーションが存在しているが、今回はブラックカラーのモデルを取り上げてみたい。

本作は、ベゼルやケース、ベルトやボタンまで、オールブラックで統一したクールなカラーリングが魅力だ。アイアンマンと言えば樹脂製ケースの印象があるが、本作の場合は頑強なステンレススティール製。ただ単に素材を変更するだけではなく、十分な防水性を確保するために金型を新規に作り直し、ケースバックの構造も改めているとのこと。見た目の高級感が格段に向上しているのはもちろん、本作に対するタイメックスの熱意が感じられる。

オールブラックとはいえ、仕上げを変えることで表情にメリハリをつけているため、眺めているだけでも楽しめる。ベゼルは艶消し、ミドルケースやベゼルを固定するネジは艶のある仕上げとすることで、立体感を高めている。ケースはエッジがやや落とされ、ほのかに柔らかな印象だ。筆者の個人的なイメージでは、多色のカラーリングこそアイアンマンらしさを特徴づけるものと考えていたが、本作を見てその考えは霧散した。

フロントに配されたふたつのボタンによって、クロノグラフの操作性を高めている。液晶は明るく見やすい。

では、アイアンマンらしさを感じさせるものは何だろうかというと、ネジ留めされたベゼルに配されたふたつのボタンではないだろうか。これは、主にクロノグラフ機能でのスタート、ストップ、ラップ、リセットなどの操作を行う際に用いるものである。着用した状態で押しやすい位置に配されたボタンは、アイアンマンのスポーツウォッチとしてのキャラクターを象徴する意匠だ。

そのほか、ケースサイドの2時位置にはライト点灯用、4時位置には時刻やカレンダーを修正する際に用いるセット用、8時位置にはモード切り替え用のボタンが配されている。使用頻度の高いボタンは押しやすく、反対に誤作動が重大な影響を及ぼすセット用のボタンは、小さく押しにくくされている。

ケースバックは地の色のステンレススティール製。ロゴやスペックに関わるテキストが刻まれている。四隅にマイナスネジを配し、ミドルケースに固定されている。

ケースバックもステンレススティール製。中央にはスペックなどのテキストが刻まれ、四隅にはミドルケースに固定するためのマイナスネジが配されている。

 ベルトは、ケースと同じくステンレススティールをブラックで仕上げたもの。7連タイプだが、両端をマットに、中央を艶のある仕上げとすることで表情を付けられている。ベルトのつくりは至って簡素だ。板を丸く折り曲げたようなコマで構成された、いわゆる“巻ブレス”である。ただし腕回りの調整はコマの抜き差しによるものではなく、ベルトの中腹に取り付けられた金具の位置をスライドさせて行うスライド式。マイナスドライバーなどで金具のロックを外し、任意の位置にスライドさせた後にロックを押し込んで固定するだけだ。調整自体が簡単であることに加え、無段階で調整できるため、腕回りにも合わせやすい。ちなみに、ゴールドカラーケースのモデルとシルバーカラーケースのモデルには、ステンレススティールではなくラバー製のストラップが装着されている。

ケースと同じく、艶の有無によってメリハリを利かせたブレスレット。クラスプにはブランドロゴが刻まれている。

多機能ゆえになかなか操作が複雑なデジタルウォッチ。それは本作であっても例外ではない。ボタンが多い分、慣れれば使いやすいが、初見で扱いこなすことは困難だろう。

本作には通常の時刻表示のほか、クロノグラフとカウントダウンタイマー、アラームの3つのモードが備わっている。各モードは8時位置のボタンを押下するごとに切り替わり、液晶に“CHRONO”、“TIMER”、“ALARM”の文字が順に表示される。説明書を確認しながら何回か操作をすれば、おおよその使い方はマスターできるはずだ。特にクロノグラフは、簡単にラップタイムを計測できるため、さまざまなものを計って楽しむことができる。

時刻やカレンダーの調整をする際には、4時位置のボタンを長押しする必要がある。長押しのため、誤って触れてしまって気付かぬうちに時刻調整が開始されているということも発生しないだろう。

本作のケースは直径39mmだが、腕に載せるとそれよりも小さな印象を受ける。恐らくケースに対してダイアルが小さく見えるためだろう。アナログウォッチでは大抵、円形のダイアルにインデックスと針が並び、視認性を確保するためにもある程度の面積を要する。しかしデジタルウォッチである本作では、長方形の液晶が実質的なダイアルであり、面積で考えればアナログウォッチよりもだいぶ小さくなる。

コンパクトなケースは、日常使いだけではなく、スポーツシーンでも活躍する。ブレスレットウォッチを着けて走ると腕元で時計が暴れて気になるが、腕回りぴったりに調整しやすく軽量な本作であればそれほど気にならない。もっとも、スポーツシーンでの着用をメインとするのであれば、ラバーストラップに変更したほうがさらに良いだろう。

ボタンの操作性も十分だ。2時位置や8時位置のボタンは、中央をわずかに窪ませることで、指で押し込んだ際に滑りにくくしている。

腕に装着する際の注意点としては、スライド式ブレスレットに慣れる必要があるということくらいだろう。三つ折れ式ブレスレットはクラスプを解放しても輪が解かれることはないが、スライド式はクラスプを解放した時点でブレスレットの6時側と12時側に分離される。そのため、ピンバックルの付いたレザーストラップと同様、片手でサッと装着することが難しいのだ。

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