【2026年新作】Jacob & Co.「Astronomia Regulator」徹底解剖。1分間で1回転する驚異のCal.JCAM56
「時計の常識を覆す」という言葉は、往々にして誇大広告として使われます。しかし、Jacob & Co.(ジェイコブ・アンド・コー)の「Astronomia Regulator(アストロノミア・レギュレーター)」に関しては、その言葉が真実を物語っています。
2026年、高級時計界に衝撃を与えたこのモデルは、時・分・秒・陀飛輪が1分間で1回転するという、前代未聞のメカニズムを搭載しています。これは単なるギミックではなく、21世紀の制針技術が到達した「頂点」の一つと言えるでしょう。
本記事では、この驚異のメカニズムCal.JCAM56の内部構造と、なぜこれほど高速な回転が可能なのかを徹底解剖します。
1分で1回転。前代未聞の「Astronomia Regulator」
これまでの「Astronomia」シリーズは、4本のアームが10分かけてゆっくりと回転するモデルが主流でした。しかし、創設者であるジェイコブ・アラボ氏の「もっと速く回せ」という指示により、この「Astronomia Regulator」は1分間で1回転するという、驚異的なスピードを実現しました。
4つの要素が織りなすダンス
この時計の文字盤上では、以下の4つの要素が1分間で時計回りに1回転します。
時針(12時間かけて1周)
分針(1時間かけて1周)
陀飛輪(1分間で1周)
秒針盤(1分間で1周)
特に注目すべきは、秒針盤の動きです。秒針盤自体が1分間で1回転するため、秒針は正確な時間を示すために、回転とは逆方向(反時計回り)に回転しなければなりません。この「回転する土台の上で、逆回転する秒針」という複雑極まりない機構が、この時計の最大の特徴です。
Cal.JCAM56:高速回転を支える「1/6秒恒力機構」
重い機械部品を毎分60回転という高速で、かつ正確に動かし続けるには、安定した動力供給が不可欠です。そこでJacob & Co.は、共同開発パートナーであるConcept社と協力し、Cal.JCAM56に画期的な機構を搭載しました。
1/6秒ごとの力制御
通常の機械式時計は、脱進機が1秒間に数回(例えば4Hzなら8回)動きます。しかし、このCal.JCAM56は「1/6秒(約0.16秒)ごとに動力を開放する」という超高速の恒力機構(Constant Force)を採用しています。
目的: 主発条の巻き上げ状態に関わらず、常に一定の力を回転体に供給するため。
効果: これにより、回転体の慣性モーメントを正確にコントロールし、秒針の表示ズレを防いでいます。
開発陣は「この1/6秒恒力機構がなければ、Astronomia Regulatorの実現は不可能だった」と断言しています。まさに、この時計のための専用設計と言える技術です。
秒針盤の逆回転メカニズム
前述の通り、秒針盤は土台と一緒に1分間で1回転(時計回り)します。そのため、秒針は「-1回転/分」の速度で動かなければ、正しい時間を刻めません。
通常、秒針は「+1回転/分」で動きますが、この時計では以下の計算が成り立っています。
土台の回転(+1) + 秒針の回転(-2) = 実際の秒針の動き(-1)
この複雑な差動歯車機構を、極限まで薄いケース内に収め込む技術力には脱帽するほかありません。
素材と仕上げ:軽量化と剛性の両立
毎分60回転という高速回転を実現するためには、遠心力との戦いでもあります。Jacob & Co.は、回転体の軽量化に徹底的にこだわりました。
軽量化のための素材選定
秒針盤: 巨大な秒針盤には、軽量かつ高剛性なポリカーボネートを採用。
回転部品: 一部のコンポーネントにはチタニウムを使用し、慣性モーメントを低減しています。
鋼製軸受の採用という逆転の発想
通常、摩擦を減らすために高級時計ではルビーやセラミック製の軸受が使われます。しかし、Jacob & Co.はあえて「鋼製の軸受」を採用しました。
これは、セラミック製に比べて「遊び(隙間)」を調整しやすく、スムーズな回転を阻害する要素を排除するためです。理論上の摩擦低減よりも、「実動におけるスムーズさ」を優先した、職人の叡智がここにあります。
スペック詳細:Cal.JCAM56
この驚異のメカニズムを数値で表すと、以下のようになります。
項目 仕様
ムーブメント Cal.JCAM56 (手巻き)
振動数 21,600振動/時 (3Hz)
パワーリザーブ 約48時間
恒力機構 1/6秒サイクル
回転速度 時・分・秒・陀飛輪が1分間で1回転
精度 垂直位置でも日差±4秒以内を実現
まとめ:21世紀の「機械式時計」の到達点
Jacob & Co.「Astronomia Regulator」は、単に見せるための時計ではありません。
「重い物を速く回す」という物理的な課題に対し、1/6秒恒力機構という解決策を提示し、鋼製軸受という伝統的な手法で着地させたその姿勢は、まさにマニュファクチュールとしての実力を見せつけています。
1分間で1回転するダイナミックな表示
1/6秒恒力機構による安定した駆動
逆回転する秒針という複雑なパズルの解決
世界限定99本のこの一本は、機械式時計の可能性を信じ、愛するすべての人に向けた「21世紀の最高傑作」の一つと言えるでしょう。