ロレックスのベストバイモデルを5本挙げた。

ちょっと一緒にウェイバックマシン(インターネット上のデジタルアーカイブ)に乗り込んでくれないか? まずは2012年までさかのぼってみよう。この年はジョン・メイヤー(John Mayer)が、8000ドル(約120万円)以下で買えるベストバイヴィンテージロレックス5本をすすめた記事を書いている。

小型のiPhone4Sをポケットに入れて持ち歩いていたあの平穏だった当時であれば、エクスプローラー 1016、GMTマスター 1675、サブマリーナー 5513といった4桁の数字を持つクラシカルなものをすすめることができた。

あれから11年がたった今、いまでも予算が8000ドル(約120万円)しかない場合、これらのリファレンスの多くは手の届かない存在になってしまったため、このおすすめを見直すときが来たと考えている。しかし待てよ。タイトルには“1万ドル(約150万円)以下”と書いているじゃないかと思ったかもしれない。十数年が経過すれば、8000ドルは新たに1万ドルほどの価値になったといっていいと思う(インフレ計算機を立ち上げながら)。そして1万ドル(約150万円)以下で手に入るヴィンテージロレックスのベストバイアイテムが、SEO対策になると周りに言われたのでここで紹介しよう(みんな、またキーワードを使えたよ!)。

今回はディーラーやコレクターの友人ら数人に聞いて、1万ドル(約150万円)以下で手に入る最高のヴィンテージロレックスを調査した。この予算だとクラシックな4桁リファレンスの大半が手に入れられないため、多くの人は1980年代と90年代、いわゆるネオヴィンテージロレックスに価値を求めており、そのほとんどはロレックスが使用していた5桁のリファレンスナンバーによって定められている。これらのリファレンスの多くはサファイアクリスタル、ルミノバ、クイックセットデイト、ミラーダイヤルなど、今でこそ高級なロレックスに求められている現代的なアップデートの一部を少しずつ導入していた“過渡期”に作られたものだ。しかし、私たちが愛するツールウォッチとなったヴィンテージのDNAは健在している。

エクスプローラー 14270
エクスプローラー 14270
2012年のリストと同じように、まずはエクスプローラーから始めなければならないだろ。調査をしたところ、1989年から2000年まで生産された、エクスプローラー 14270の名前が最も挙がった。少し豪華になったくらいで、昔の1016と同様にシンプルだ。おそらくロレックスのなかでいちばん純然たる表現がされたツールウォッチであるとも思っている。

ベン(・クライマー)にレコメンドを頼んだが、彼はシンプルに“初期の14270だ”と答えた。ちなみに14270(少し価値がある)は彼が初めて買ったロレックスであり(もちろんブラックアウトした珍しいバージョン)、エリック・クー(Eric Ku)氏も“僕が愛した最初のロレックス”だと語ったことがある。ちなみにほかにどんな価値(どちらかといえばかなり低い)があるかというと、私の初めてのロレックスでもあったことだろうか。

 14270は生産期間中に多くの変更が加えられた。それは文字盤に使用されている蛍光塗料によって区別され、10年のあいだに“T-Swiss”から“Swiss Only”に、そして“Swiss Made”へと表記が変化している。ダイヤル、ケース、ブレスレットにも変更があり、それについてはダニー・ミルトンが書いた14270に関する深掘り記事で紹介をしている。ただし1万ドル以下であれば、ブラックアウトダイヤルのようなごくまれなものを除いて、さまざまなバリエーションを選ぶことができる。

 私はベンと同じく、トリチウム夜光に、ストラップやブレスレットの変更が簡単にできるラグ穴を備えた、初期の14270 “T-Swiss” エクスプローラーに1票入れたい。エクスプローラーの美点のひとつは、どんなものにも合うことだ。ロレックスは94年頃に14270のラグ穴を廃止し、また98年頃にトリチウムの採用をやめた。ほかのバリエーションについてもっと詳しく知りたいなら、ダニーの記事(“トリチノバ”ダイヤルの部分)を参考にしてほしい。14270の両方の長所を説明した同記事の引用を下記に残しておこう。

 “Ref.14270は現代のロレックスのアイデアに多くのことを遺した時計であるし、今後何年にもわたってその古きよき時代のミニチュアとして楽しむことができる時計なのだから”

価格: 5500~6500ドル(日本円で約80万~95万円)

エクスプローラーII 16570(ポーラー)
ロレックス エクスプローラーII 16570
“Swiss Only”表記の16570。

 エクスプローラーII 16570 “ポーラー”は、長いあいだ熱狂的なファンに支持されてきた。これはホワイトダイヤルを持つクリーンなスポーツウォッチで、ロレックスのカタログではあまり見かけないモデルだ。

 “サイズ、機能性、新旧ロレックスとのミックス、なにより日常的なロレックスのなかでも一風変わった存在のエクスプローラーIIの継続というのが気に入っている”と、私の同僚であり、16570の誇りあるオーナーであるジェームズ・ステイシーは述べている。

ロレックス エクスプローラーII 16570
トリチウムマーカーが経年変化した、初期の16570。

“何度でも16570のホワイトダイヤルと言いたい。なかでも理想はトリチウムがいい”。1万ドルの質問をしたところ、Fog City Vintageのティム・ベンダー(Tim Bender)氏はそう答えた。

特にベンダー氏は、黄色/オレンジへと色合いが変わった夜光マーカーにちなんで付けられた、16570の“Chicchi Di Mais(チッチ ドゥ メイ)”ダイヤル(イタリア語でトウモロコシの粒の意)のファンだという。これらのダイヤルは90年代初期のトリチウムエクスプローラーII(E、X、N、S品番)で見られる個体だ。

同氏は“クリーム色の16550 エクスプローラーIIよりも、むしろこっちのほうが好きなんだ”と話す。クリーム色の美しいパティーナへと熟成したものに、コレクターは大金を払っていると言及した。“チッチ ドゥ メイはおそらくその16550と同じくらい希少なものだが、流通価格は約3分の1である”。

今日、これらのうちのひとつを買うには、1万ドルから1万2000ドルはくだらないと彼は言う。今回の1万ドル演習のために、仮に私が平凡な交渉役で、ティムが1万ドルで売ってくれたとしよう。そしてそんなイタリア的なことにこだわらないのであれば、ティムはドリルドラグと、しっかりとしたエンドリンクを備えたルミノバダイヤルのものをすすめてくれるだろう。これらは2000年初頭に数年間だけ提供されていたものだ。それであれば軽く1万ドルを下回る。

ジェームズは16570の実用性を強調し、ベンダー氏はチッチ ドゥ メイのような変わり種の潜在的なコレクター性に注目した。ここ数年、多くの人が5桁ロレックスの時代に心引かれるのは、ジェームズが言及した新旧のミックスロレックスにある(4桁モデルはますます手が届かなくなってきているのも加味して)。

“ホワイトダイヤルは、16570が僕のお気に入りの5桁ロレックスのなかで最も気に入るほど魅力的だ。いやむしろ、今まででいちばん好きなモダンロレックスだと言い切れる”とジェームズ。彼にはピッタリだし、私にとっても十分なのだ。

価格: 7500~9500ドル(日本円で約109万~138万円)。チッチ ドゥ メイは1万~1万2000ドル(日本円で約146万~175万円)